上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
ドライヤー

年末に写真の整理をしていたら、去年の9月に訪れたアヴィニョンの宿で撮影した、ドライヤーの写真が出てきた。
なぜわざわざこんなものを映しているのかというと、そこには大変単純で馬鹿馬鹿しいドラマがあった。






****


もともと一週間ほどの旅行で、旅の一日目はパリのビジネスホテルに一泊、そこから列車で南下、リル・シュル・ラ・ソルグという小さな村の宿で一泊(この宿は後述するとおり素晴らしいところだった)、リルシュルからほど近いアヴィニョンの宿で三泊して南仏の都市を周り、パリに戻ってビジネスホテルに一泊、という旅程だった。

このドライヤーは、その中のアヴィニョンの宿にあったものである。
古いながらもアットホームな宿で、おかみさんは英語が通じないけれど身振り手振りで説明してくれるので何となく話はできるし、多少設備は古くて汚いところはあるものの(着いて一番初めに私がしたのはヘルニア腰痛持ちの姉の分と自分の分のスーツケースを持ち上げて階段を上り下りすることと、さらにバスルームの掃除だった)、広くて居心地の良い宿だった。何よりも宿泊料が安い。

着いて早々、部屋の中とアメニティをチェックする。ゴミ箱がないので、フロントでもらった大判のガイドマップを折ってゴミ箱を作る。汚れているトイレの掃除。数の足りないタオルをもらいにいく。
そのとき気付いたことに、部屋にはドライヤーがなかった。あれ、事前にネット予約で調べていたときは「ドライヤーあり」のはずだったけど・・・日本から持参していればいいのだけれど、実は海外用のものを持っていない。

折しも日曜日だったためスーパーは開いていない。フロントは20時に閉まるのでとにかくおかみさんに聞いてみようと思い、電子辞書で「ヘアドライヤー」という単語を調べて紙に書いて持って行った。“seche-cheveux”(アクサン記号の出し方不明につきローマ字のみで表記)というそうだ。発音はよくわからない。
おかみさんにそれを見せて、これ貸して、貸して、と言ってみると、おかみさんは頷いて、奥へ入っていった。

その場で待っていればいいのに、何を思ったのかそれにとことこ着いていく私。すると、おかみさんがカギのかかった戸棚からドライヤーを出してくれた。その戸棚の中にはいくつかドライヤーがあり、一番近代的な、マイナスイオンとかが出そうなやつを貸してくれたので、ぼんやりした私は「わぁ、色んな種類があるんだなぁ」と素直に感心していた。

すんなりとドライヤーが借りられてありがたかった。何せ我々は髪が長い。こんなロングヘアーで寝てしまったら風邪を引いてしまう。
おかみさんにお礼を言って、部屋に帰ってよく見てみると、ドライヤーには中国語が書いてあるうえ、差し込みプラグがAタイプ(アジアでよくある形)である。一瞬「?」と首をひねったが、きっと中国人観光客の忘れ物であろう。宿情報にあった『ドライヤーあり』とは、「ストックありますよ」という意味だったのか。
「偶然にも我々が東洋人で、AタイプのプラグをCタイプに差し込むためのプラグを持っているからよかったようなものの!」「でもよかったね、ちょうど」と言い合いながら、スーパーへ夕食の買い出しに行くことにした。


****


おかみさんに聞いたところ、日曜日だけれどカルフールなら18時まで開いているという話だったが、行ってみるとカルフールは思いっきり閉まっていた。仕方なく向かいのファストフード的パン屋でサンドイッチ等を購入。部屋でご飯を食べる。
ヨーロッパだと大体、旅の間の数日間は夕食を部屋で軽く済ませる。毎日レストランなんかに行っていたら、私の胃腸はとてももたない。さらにその日は移動で疲れていたため、さっさとお風呂に入って寝ることにした。

22時ごろ、一番目のお風呂あがりさんがドライヤーをつないで早速使ってみると、ドライヤーは「パーン!」という音を鳴らして止まってしまった。びっくりした。
どうやら海外対応していないものなので、変圧器が要ったらしい。借り物(忘れ物)のドライヤーを壊したうえ、変圧器も持っていないので、「どうしよう」「どうしよう」とおろおろ。

髪が乾かしたい。しかしフロントは20時で閉まっている。フロントから電話してみるとしても、声だけでは一切内容を伝えられない。恥ずかしながらフランス語はまるでできないので、ジェスチャーと筆談(絵含む)があって初めてコミュニケーションが取れるというレベルである。

いちかばちか、風呂上がりの身体に汗のしみ込んだ服をもう一度着てフロントへ降りてみると、当然のことながら誰もおらず真っ暗だった。
とりあえず、見るだけ!と思って、昼間おかみさんにくっついていったバックヤードに行ってみると、ドライヤーが入っていた戸棚に、偶然にも鍵がささったままになっている。ラッキー!と扉を開けると、たった一つ、小さなドライヤーが残っていたのだった。なんという幸運・・・!もちろんプラグはCタイプ!フランス国内のやつだね!

大事に部屋に持ち帰って、ありがたく長い髪の毛を時間をかけて乾かした。ありがとう、昼間の自分のよくわからない行動、ありがとう、おかみさんのゆるい戸締り・・・!

ちなみに、同じ戸棚にはコンセントの変換プラグが大量にストックしてあった。これも同じく、観光客の忘れ物であろう。変圧器はなかったので、残念。ま、その時点で借りてももう遅かったのだけれど。

このドライヤーが滞在中になくなると困るので、ずっと部屋で確保させていただいた。多少の罪悪感もあったが、ほかに同じような境遇の人がいたら、平日のカルフールで購入するか、変圧器を使ってもらうことを期待して。

ともかくもドライヤーが借りられてありがたかったので、ありがた記念に写真を一枚撮っていたのだった。懐かしいね。

そこから、いかに自分がぼんやりしているか、いかに自分がお人好しかについて反省。旅行中ぐらいは、すぐに人の言うことを信じたり、ほいほい人について行ったりするのをやめて、もう少し疑い深く、抜かりなくチェックしておく必要がある。

そんなお人好しが旅行した形跡を、ちょっとずつ写真とともにアップしていこうと思う。もう半年ほど前の話だけれど、これだけ前置きが長くなっているところからして、一般的な時間経過の概念とか持ち出しても仕方ないということをうっすら感じていただければありがたい。


****


さて、初日に戻って到着から。


ヌードル

機内で食べたカップ麺。エールフランス航空では、夜食タイムに「アイスorヌードル」という、シュールにかけ離れた二者択一の選択肢で食べ物がもらえる。小腹が減ったのでミニカップ麺をもらい、その変わらぬおいしさに感動する。夜食としての完成度が高すぎる。
そういえば先日テレビで、フィンランドの若い女の子が「ラーメンは本当においしい、神様の食べ物だ」と言っているのを見た。

私の二つ隣に座っていたのはドイツ人のビジネスマンで、目が合うと必ず微笑んでくれる、とても紳士的な方だった。そして私がカップ麺を食べているところを、わが子を見つめるような優しい眼差しで、しかし「ジャパニーズ・ガールが麺をすする」様子を興味深い面持ちで眺めていることに横目で気づいてしまい、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。日本では老若男女問わずよくある光景なのですが。

空港での入国審査はフランスらしく長蛇の列で、何とかそれをすり抜けて今度はエアポートバスに乗り、パリ市内へ。パリ・リヨン駅で降りる。そこから地図をたよりにうろうろすること数十分、路地の奥まったところにホテルはあった。
近くのおいしそうなパン屋さんで、翌朝の朝食にキッシュやパイを購入。

その日は泊まるだけで、翌朝リヨン駅から列車で南を目指す。目的地はリル・シュル・ラ・ソルグという骨董品市で有名な小さな村である。


****


朝のリヨン駅に到着し、乗るべき列車を探す。マルセイユ行きの電車の掲示が見当たらないので辺りにいたお兄さんに聞くと、どうやらホームが違ったらしい。よく見るとその人は駅員では全くなく、スーツを着込んだ警備っぽい人だった。どうりでコワモテだと思った。

しかしその人、かなり遠くの掲示板を見て「あっちだ、ああ行って曲がるんだ」的なことを教えてくれたが、あんなサングラスをしてあの小さな文字が識別できるなんて、もしかしたら視力が3.0ぐらいあるのかもしれない。警備の人間として非常に優れた能力である。しかも、年端もいかぬ(ように見える)東洋人の女の子から道を尋ねられて、迷惑そうな顔ひとつせずに周囲に気を配りながらも冷静に答えてくれるなんて、ある程度の余裕がなければできない。
見かけによらず、優しい声の人だった。

電車は二等車でもとっても快適、2時間半ほどでアヴィニョンTGVに着く。そこからナヴェットというシャトルバスに乗り(乗り場がわからずあちこちで聞きまくった)、アヴィニョンサントルという在来線の駅へ向かった。駅の間は結構離れている。


パン

また小腹が減って、パンの腹持ちの悪さをかこちながら、電車の時間をうっかり調べずにアヴィニョンの街へ昼食を買いに出てしまった。
ふらりと入ったパン屋さんのクロワッサン・ダマンド、サーモンのサンドイッチが絶品。アヴィニョンを拠点とするときにまた来ようと心に誓う。


1Q84

お腹を満たして駅へ戻ると、電車の本数はどうやら少ないもよう。ぼんやりしていた私たちが悪い。
仕方なく近くをうろうろした挙句、再度同じパン屋に戻って今度はおやつパンを買い、また駅へ。
駅の書店にはおしゃれな『1Q84』があった。どうしてくれる、今すぐ帰ってまた読みたくなるじゃないか。


駅舎

カヴァイヨン行きの在来線に揺られ、目的の駅へ到着。駅舎は古いけれど趣がある。
帰りの電車の本数がまた少ないのではないかと案じて、駅で時刻表を書き写したりデジカメで撮影したりしていると、駅員さんが出てきて何やら尋ねてくれた。
私たちが「?」という顔をしていると、英語で“Do you need something?”と聞き直してくれる。なんて優しい人だ。日本のサービス業並みの優しさを目の当たりにして、個人主義・権利主義で有名なフランスでも、土地によって、人によって、ずいぶん違うもんだなぁと今更ながらに思う。もちろん、日本でだって同じことである。お人好しの身には染み入るようなあたたかさである。

ここからスーツケースをごろごろ引き引き、ときに押し押し、今日の宿へ向かった。
今回泊まる宿のうちで一番楽しみにしていた、修道院を改装したホテルである。“La Prevote”(アクサン記号の出し方不明につきローマ字表記で失礼)というところで、部屋は全部で5室。しかし決して高級ではなく、私たちでも宿泊できるようなお値段だった。


****


プレヴォテ

ここの宿はエクステリアからインテリアから、細部に至るまで「素敵!」の連続。願わくば何泊もしてのんびりしたいところだった。


プレヴォテ3

ホテル入口。かわいい。


プレヴォテ2

階段も素敵。憧れの佐々木敦子さん装丁・挿画の『ホテルカクタス』(江國香織・著)みたい。まさかこんなところにこんな世界があったとは。時差ぼけをいいことに、部屋でしばし休息。

しばらく休んだのち、せっかくだからと街歩きに出かけ、くねくねした路地を歩いてかわいいお店などを見つけたが、おそらく移動の疲れと時差のせいであろう、ちっとも足が動かない。頭も働かず、お腹も空かない。牛歩で「もうこれ以上は無理」「ホテルに戻ろう」とじわじわ進んでいると、突然ショコラティエが現れた。


ショコラティエ2

チョコレートのいい香りに惹かれて店内に入るとそこはチョコレート天国であった。国境の長いトンネルは抜けてはいないが、そこは天国であった。
ぼんやり眺めていると、お店を切り盛りしている女性が白い手袋をした手で丁寧に、かつてきぱきとチョコレートを取り出し、試食をすすめてくれた。「これはシトロン」「これはキャラメル」「これはプラリネ」「これはフレーズ」「これはコーヒーとレモン」、といくつもいくつも出してきてくれる。


ショコラティエ1

その女性の、「私たちは本当に質の良い素材を使ってチョコレートを本気で作っている、だから食べる人にもきちんと味わってほしいし、本当においしいと思ったものを納得して買ってもらいたい」という姿勢がビシビシ伝わってきて、チョコレートを食べながらその職人魂に感動してしまった。

パリでもいくつかショコラティエに行ったけれど、やはり都会的というか商業的な面が一部あって(それは都会だから絶対に仕方ないことだし当然のことなのだけれど)、ここは田舎、のんびりとした商売っ気のなさを肌で感じて癒される。
チョコレートを大量に試食し、いくつかおいしかったものを買い込んで完全に復活した私たちは、やや軽い足取りでホテルへ戻った。

今晩は、ここのホテルのレストランで食事をしようと思う。来るまでよくわかっていなかったが、ミシュランで星を獲得しているレストランなのだそうだ。本格的なフランス料理は初めてで、少し小綺麗にして出かける。


****


前菜

メニューは、何だかわからないものの冷製スープ(聞いたことのない単語で忘れてしまった)、前菜にフォアグラ、メインにブイヤベース、デザートにフロマージュ五種。
フォアグラは冷たいパテで少し食べにくく、残してしまったのが心残りだった。そりゃあ、前菜だから火を通したものが出てくるはずはないけれど、トライしてみたかったので。ちなみにメニューはフランス語しかなく、辞書でも細部の理解不能だったため宿のご主人に英語で説明してもらった。

ブイヤベースは海の味、なおかつさすがフランス、魚の身を半分だけ残して、半身は詰め物みたいなものを作ってくっつけてある、というおしゃれ具合・・・!漁師の料理とは思えない芸術的完成度。濃いスープがおいしい。
自分を入れて写真を撮ってしまったのでアップできず。


チーズ

デザートのフロマージュはおそらくワインを嗜む人のためのものだと思うのだけれど、私はワインは飲めない。そもそも、旅先ではアルコールを飲まない。お酒好きの人からすると旅行の楽しみを半減させる、言語道断の行為なのだろうけれど、胃腸が弱いので仕方がない。そのために食事もセーブするぐらいである。行く先々でお酒が飲めたらそりゃあ、きっともっと楽しいだろう。

しかしフランス料理を味わってみたかったので、パインジュースを飲みながらチーズを選択した。甘いチーズはないらしい。15種類ぐらいから好きなものを選んだ中では、ヤギのチーズ、というのがクセがなくておいしかった。

22時ごろになってようやくディナー終了。こうして食に情熱を傾ける、ラテンの血はやはりすごい。私だったら絶対に朝起きられない。これが土曜日の晩のこと、翌日は楽しみにしていた日曜恒例・骨董品市に繰り出します。
(つづく・旅行記2以降は不定期更新)




Secret

TrackBackURL
→http://teaplan.blog61.fc2.com/tb.php/653-dae25037
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。